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編集長の指令をまっとうすべく始まった本企画。それは『NAVIelite』の走行軌跡を描き出す機能を使って何かをせよというものだった。私は助手席に乗せたモデルさんにとっておきのキザなことをし、その反応を見ようと思い立ったのだ。どんな軌跡を描き、それを見たモデルさんは何を思ったのだろうか。
第2目的地、シャトーカミヤの駐車場に着いたのは14時30分頃だった。駐車場で「さて、昼食を」と声をかけ、iPhoneをステイから取り外す。私に限って車上荒らしにあうことはないと思いたいが、可能性がゼロとはいえない。
車上荒らしで標的にされるのは、金品。"品"のなかにはもちろんカーナビも含まれる。過去に空き巣に入られたことのある私にとっては、この取り外し可能か否かは結構気になることなのだ。
iPhoneを握り締めながら、シャトーカミヤに入ると、オシャレな空間が広がっていた。ドラマやCMでの撮影に使われたことがあるというのも納得。外食と言えば、ラーメンとカレーぐらいしか思い浮かばない私にしてみれば、オシャレすぎるスポットだろう。
私たちがまず立ち寄ったのは、スーベニアショップ。モデルの恭子さんはソムリエの資格を持っているとのことなので、なにやらものすごい真剣な表情でワインを見ていた。
その後で立ち寄った、レストランでの恭子さんの反応も上々だった。ワインの知識がない私に向かって、ワインのことをいろいろ話してくれた。話の内容は理解できなかったが、とにかく、上機嫌になってくれればそれでいい。これで後半戦も楽しくロケが続行できるわけだ。
レストランを出たところで、「さあ、これからが本番です! 頑張りましょう」と恭子さん、そしてカメラマンに声をかけると、恭子さんはようやく疑問を持ったような表情を浮かべた。ここでダイレクトに「今日の予定ですが、この後のことって知ってます?」と聞いてみたのだが、恭子さんは「いや、おいしいものを食べに行くロケってことは聞いたんですけど」としかかえってこない。
本当に何も知らないようで、こちらとしてはテンションがあがる。企画が順調に進んでいることを確認し、にんまりしつつ、我々は次なる目的地に向かって出発することにした。
ちなみに、ここでひとつ付け加えておきたいことがある。それはスーベニアショップで撮った写真だ。『NAVIelite』には写真の位置情報をもとに目的地を設定することができる。位置情報のついた写真があれば、写真に付加された情報をもとに『NAVIelite』でいつでも手軽に今回の場所にたどりつけるというわけだ。思い出野郎の私にとっては、必須の機能かもしれない。機会があれば、この点をクローズアップした記事をお伝えしたいと思う。
我々は再び次なる目的地に向かって出発した。国道408号線に乗り、北西方面に向けて車を走らせる。榎戸交差点に着くと「目的地周辺に到着しました」と『NAVIelite』からアナウンスが流れた。
そして、今度は国道354号線に乗り、南西方面に向けて車を走らせる。しばらく行ったところで『NAVIelite』の案内どおりに左折すると、そこは私でも予想していなかった道が続いていた。何も知らなければ不安になるような道だったのだ。
車線が2車線から1車線に減り、明らかに地元の人しか使わない道に変わっていく。国道でもなく、県道でもない。住宅地の真ん中を突き抜けていくような道だ。
「本当にここを走るの?」といったような細い道。目的地を設定したのは私だが、自分でも「まさかこんなところを……」といったような感じの道だった。こんな道でも的確に案内してくれる『NAVIelite』にはちょっと感動を覚えつつも、ちゃんと軌跡が描けているのか不安になっていた。
一方、モデルさんにしてみたらどうだろう。当初の「おいしいものを食べに行く」という目的を終え、誰も好んで選ばないようなルートに連れられていく。どこに行くかも知らされていないわけだ。少なくとも私がモデルさんの立場だったら不安に感じるだろう。
つい1時間ほど前とは打って変わって、モデルの恭子さんの口数は次第に減り、このあたりでは完全に無口に。すると、殺風景な田畑に走った道の真ん中で、『NAVIelite』から再び音声案内が流れた。「目的地周辺です」と。
周囲からは住宅も消え、今あるのは冬の殺風景な田畑のみ。人も見当たらず、車も走っていない。まだ日が出ているからいいものの、これが夜だったら、恐いだろう。否、夜を選べばよかったのかもしれない。今、何をしているのかという疑問を抱いてくれるだろうから。
田園風景を抜けると、あとは国道上を道なりにそって車を走らせるだけとなる。もう、迷うところはない。車内の雰囲気は前半とは打って変わって、車内は静かになってしまったが、演出はここまでで一端、終わり。あとはモデルの恭子さんと談笑するだけだ。
そう思った私はモデルさんに「ねえねえ、中日と巨人どっちが好き?」「バターとマーガリンどっち派?」などと他愛もない強引な会話をすることに尽くしていた。ちなみに、私は野球にまったく興味がないし、ごはん派だ。
そして、次なる目的地、取手市白山付近に着いたのが17時。そこに着くと、すぐさまカメラマンに『NAVIelite』の「走行軌跡を書き出す」を押してもらい、モデルさんに「とりあえずは一時的にお疲れ様です!」と声をかけた。しかし、ここではまだ終われない。クライマックスはここからである。
車を走らせ、最終目的地に向かうのだ。その場所とは江戸時代の街並みが楽しめる歴史公園「ワープステーション江戸」。私は最後の演出をすべく「実は、私、歴史オタクでして、江戸の街を散歩しましょう。ここが本当の最終目的地なんです」とモデルさんに声をかけた。
殺風景な田園を走ってみたり、「私、歴史オタクだから」と言い出したり「バターとマーガリンどっち派?」なんて聞いてみたり、一番わけがわからないのは、モデルの恭子さんだろう。語尾低調に「はぁ?」としかいいようがないのかもしれない。口元は笑っているが、目はもう笑っていない。わけのわからないロケに、「もう疲れたわ」という感じがひしひしと伝わってくる。
お疲れモードの恭子さんの了解を取り付け、車をさらに走らせること約30分、「ワープステーション江戸」の駐車場に到着。恭子さんがちょっと外の空気を吸いにでたところで、私は即座にiPhoneとMacを接続。iTunesを立ち上げ、iPhoneから自分のMacに走行軌跡となるKMLファイルを取り出した。そして、Google Earthを立ち上げ準備を終える。これが最後のミッションだ。
恭子さんが戻ってきたところで、彼女にすべてを打ち明けることにした。
「恭子さん。今日はお付き合いいただいてありがとう。目的地がいっぱいあったりだとか、歴史オタクだからここに来たいだとか、散々連れまわしてしまったけど、あなたに見せたいものがあって、今日一日、この『NAVIelite』を使って頑張りました。最後にこれを見てください」
私は恭子さんにそう言って、Google Earth上でKMLファイルを選択して、ファイルの表示を実行させた。すると、Google Earth上の地球がぐるぐるとまわりだし、徐々に日本、関東、茨城へとズームアップしていく。
最後に表示された軌跡、それを恭子さんが見た瞬間、そしてそれをみて思わず出てしまった恭子さんの言葉、表情、すべてが忘れられない。彼女が発したのは「かわいい!」という言葉だが、文字だけでは伝え切れない彼女の表情、声色、心の動き。無邪気に彼女が口にした「かわいい!」という姿がものすごくかわいく見えてしまったのは偽らざる本音だ。
もう、これはしてやったりなのだが、もうひとつ伏線がある。軌跡を見せるだけなら、ここに来る必要はない。なぜワープステーション江戸に来たのか。それを説明するために、私は恭子さんに再度、軌跡をみてもらい、「今ね、私たちがいるのはここです」とハートの中心を指差した。
そして一言。「セカ…いや、ハートの中心から愛を叫んでみる」っていう恋人のための企画だったというのはどうでしょう?」。
恭子さんにそう伝えると、ようやく腑に落ちたご様子。今日一日何をしていたのか、何のためにここにいるのか、すべての点が線としてつながったようだ。
いまさら、誰もやらないような最高にキザな企画。今回は、それを実行したわけだ。実施前から、本当にハートがキレイに描けるかどうか、恐る恐る進めていたというのが本音だ。
軌跡を描くために定めた目的地は、取材前段階からかなりの細い道を通ることはわかっていたとはいえ、こうもうまく成功するとは思わなかったし、Google Earth上に描かれた軌跡を見たとき、心の片隅で「うはっ、すげぇ」とも思ってしまった。「こんな粋な遊びもできるんだな『NAVIelite』は」と。
最後に、感動の声を上げた、恭子さんがどう感じたのかも記して締めくくりたい。彼女いわく、「えっと、気持ちは嬉しいんですが、初対面の人だとちょっと気持ち悪いかな……。これが好きな人とか、もう完全に盛り上がっていて、付き合う前とかだったらありですね」と。
う〜ん、厳しいお言葉。これが現実。素直な反応なのかもしれない。しかし、表示された軌跡を見たときに恭子さんが口にした「かわいい」という言葉に嘘はないだろう。だから、私は思う。してやったり、してやったりと。