
![]()
最初の発表から4ヶ月、ついに米Playboy (プレイボーイ)誌のiPad版「iPlayboy」の提供が5月20日(現地時間)に開始された。プレイボーイといえばヌードグラビアなども掲載されたいわゆるアダルト雑誌のカテゴリにあたるものだが、現在AppleはApp Storeでのアダルトコンテンツの配布を認めていない。そこでプレイボーイではコンテンツ配信にApp Storeを介さず、Webブラウザで閲覧可能な「Webコンテンツ」としてサービスの提供を行うことにした。
iPad版プレイボーイの話は、プレイボーイ総帥のヒュー・ヘフナー(Hugh Hefner)氏が自身のTwitterアカウントで1月中旬にその計画について語ったことにはじまる。この時点での計画は、iPadでプレイボーイの誌面をそのまま提供するというものだったが、この時期に前後してAppleがApp Storeでのアダルト(とAppleが判断した)コンテンツを一斉に排除するといった強硬策を採っていたこともあり、どのようにコンテンツを提供するのかについてヘフナー氏への質問が集中した。同氏はTwitter上で質問に対して丁寧に返信しており、まずコンテンツはApp Storeを介さないWebページとして提供することで審査を回避すること、そして誌面は最新号だけでなく、過去の記事(なんと創刊号の1953年12月号も!)をすべて閲覧可能にすることを説明した。その後、このiPad版プレイボーイの提供開始の話はなかなか登場せず、その後立ち消えになったとも噂されていた。だが今月に入り、提供開始が近いとの関係者の話が出始め、ついに「iPlayboy」の登場となったわけだ。
まずはサービスの概要から説明しよう。結論からいってしまえば、時間をかけたこともあり「非常によくできたサービス」になっている。「http://i.playboy.com/」というURLにiPadのMobile Safariブラウザでアクセスすると、iPlayboyのサイトへと接続できる。簡単な無料ツアーの紹介が行われた後、新規アカウント作成またはサブスクリプションの更新が行えるようになっている。サブスクリプションは1ヶ月が8ドル、1年が60ドル、2年が100ドルと契約年数が長いほどお得だ。ここでクレジットカード情報を入力し、18歳以上であることに同意した後にアカウントが有効化される。なおサブスクリプションは自動更新になっているようで、キャンセルするまでは機能が有効になっているようだ。
メンバーログインするとトップページが表示される。最新号、今月のプレイメイトのイメージビデオ、抽出された主要コンテンツやコラムへのアクセスが可能だ。最新号の表紙をクリックすると、その号の誌面を表紙から目次、広告、特集グラビアまですべて横スクロール形式で順番に閲覧できる。誌面はもちろんピンチ/ズームによる拡大縮小が可能だ。通常は全画面モードで誌面が表示されているが(Safariのナビゲーションバーはそのまま表示されている)、画面を軽くタップすると上部にナビゲーションバー、下部にページ一覧がサムネイル形式で表示され、これを使って一気にページをとばすことができる。
またナビゲーションバーからはメインメニューに戻ったり、過去の誌面を選択して読むこともできる。サブスクリプションが有効化されているうちは好きな号の誌面をいつでも読めるわけで、これは最新号のみが閲覧可能なiPadマガジンが多数ななか、ある意味で画期的だ。またiPadならではの特徴として、本体をの向きを変更するとレイアウトが自動的に最適化されることが挙げられる。ランドスケープモード(横置き)では網羅性が高く、通常の縦置きモードでは1ページあたりの誌面の閲覧性が高い。たまに画面の回転でレイアウトが崩れることはご愛敬としても、ナビゲーション含めて非常に完成度が高いといえる。
|
|
|
サブスクリプションが有効な間は過去のすべてのプレイボーイのバックナンバーにアクセスできるのがiPlayboyのすごいところ。1953年12月号……つまり創刊号も読むことができる。マリリン・モンローのグラビアで瞬く間に完売した伝説の号だ |
|
さて、iPad用とはいいつつもiPlayboyは普通のWebサービスだ。もちろんPCで閲覧することもできるので、実際にどういった環境であれば動作するのかを簡単に検証してみた。WindowsとMacの両方で各ブラウザでの動作を比べてみると、Internet Explorer、Firefox、Operaは正常動作しなかった。具体的には、メインメニューや動画などは見られるもののJavaScriptなどを駆使した記事本体の閲覧画面が正常に読み込まれない(IE)、読み込めても正常に表示されない(Firefox、Opera)といった具合。さらにFirefoxではメインメニューの表示も若干異なる(レイアウトが違い、画面が全体に左上に寄っている)。
|
|
|
Webコンテンツのため、もちろん普通のPCブラウザで閲覧することも可能。画面はWindowsでChromeからアクセスした状態で、フルHDと解像度が非常に高いため写真や文字がより鮮明に見える。iPadと異なり、画面を拡大する場合はピンチズームではなく、マウス等のスクロールホイールを用いる |
|
結局のところ、完全に正常動作するのはChromeとSafariのみ。iPadのWebブラウザはMobile Safariなので、WebKit系ブラウザ以外での動作は保証していないのだとみられる。またすべてのコンテンツを画像として扱っているため、WindowsとMacのどちらでも動作は同じだ。画面の拡大縮小はマウスのスクロールホイールの操作で行えるし、MacBookなどでは二本指によるスクロールも可能だ。
| 各ブラウザのiPlayboyへの対応 | |
|---|---|
| Internet Explorer 9 | 非対応 |
| Firefox | |
| Opera | |
| Chrome | 対応 |
| Safari | |
総評だが、通常のiPhoneアプリとは異なり、すべてHTMLとJavaScriptで動作しているにもかかわらず動作は軽快だ。ただすべてのコンテンツが画像のため、ブロードバンド環境が必須となる。コンテンツをアプリとしてデバイス内に溜め込めないぶん、外出先で閲覧するのは難しいだろう。コンテンツはまず各ページのサムネイルが一気に読み込まれ、その後スクロールして各ページが選択されるたびにより詳細な画像を読み込む、もし画像を拡大した場合、さらに細かい画像が読み込まれるといった具合だ。読み込まれる画像の解像度はスクリーンサイズに合わせて調整されるため、1,920×1,080ドットといったPCの大画面にブラウザを最大化させた状態でコンテンツを表示させると、最初から高解像度の画像が読み込まれるようになる(ここからさらに拡大することも可能)。
一方で、iPadの解像度では、写真の閲覧は問題ないものの、特集記事などの本文を読むのは文字がつぶれていてつらい。適宜拡大が必要だ。記事本文の文字が細かいせいもあるが、あまり読み物向けの体裁にはなっていないように思える。将来的にiPadが高解像度表示に対応するのであれば、コンテンツの側の高解像度化にも期待したいところだ。
またもう1つ面白いポイントとして動画再生が挙げられる。WindowsやMacで動画を再生する際には、Flashプラグインを要求される。Flashプラグインがインストールされていない場合、最新版のダウンロードを促す警告が表示される。これはブラウザにおけるHTML5の対応動画コーデックいかんにかかわらずFlashを利用するようだ(SafariでもFlashを利用する)。だがiPadではFlashに対応しておらず、この場合はHTML5のvideoタグでH.264動画を再生しているものと思われる。このあたりは興味深い違いだ。
iPlayboyをビジネス的側面で見ると、今後このようにAppleの審査を嫌ってApp Storeをバイパスするコンテンツが多数登場する可能性は高い。だがこの場合はコンテンツが個々に認証や課金システムを用意せねばならず、大きな負担だ。また読者も別個にユーザー登録が必要なため、よほど強力なコンテンツでない限り登録すらしてもらえないだろう。iPlayboyではそういった問題をクリアできるとみられ、今後はこれでどの程度収益が上げられるかに注目が集まることになる。
一方で、市場に出回っているほとんどの雑誌コンテンツにとって、iPlayboyに追随することは難しい。個々に課金システムを構築するのではなく、複数の雑誌がまとまって共通の課金基盤を構築するなどの工夫が必要だろう。その点でApp Storeのシステムは利用が容易なうえ、ユーザーがコンテンツに料金を支払うハードルも格段に低く、コンテンツの内容などに対するさまざまな制約に目をつぶってでも、App Storeの利用を続けたほうが事業者によっては有利なケースも多いとみられる。非常に悩ましい問題だ。